「フルサイズラバージグは死んだ」
昨今のフィネス中心のフィッシングシーンを見ていると、上記のように言い切ってしまいたくなる。
ぶっちゃけ出番が少ない。出すべきタイミングもわりと限られている。でもカッコいい。釣れればデカい。それがフルサイズラバージグ。
個人的に大好きなルアーの1つなので、ジグが活きるであろうシチュエーションを再検討してみたい。
もくじ
フルサイズラバージグは死んだのか。ジグが活きるシチュエーションを再検討する
フルサイズジグの”死”
近年はめっきりラバージグの出番が減った。
これは僕だけではなく、ほかのアングラーにとっても少なからず当てはまることではないだろうか。
ラバージグはラバージグでも、「スモールラバージグ」ばかり使われる。これが現状だと思う。
春先のスポーニングシーズンや、濁ったときなどは出番がおおいものの、それをほかにすればフルサイズのラバージグでの釣果を見かけることは激減した。
僕自身の釣りにおいても、フルサイズジグでの釣果は減っている。
リーダーレスダウンショットリグやフリーリグなど、「ワーム単体系リグ」での釣果が主になりつつあるのは否定できない。
日本のバスプロのトーナメント戦においてもフルサイズジグがウイニングルアーになることはほとんどなく、実質、ラバージグは死んだ…という表現をしても100%間違っているとはいえないくもない。
かつて、ロックスターのレニー・クラヴィッツは「ロックは死んだ(ロックンロール・イズ・デッド)」と歌った。
そこで僕は「ラバージグは死んだ」と歌う。いや、歌ってはならない。ラバージグはまだ死んじゃいない。そう思いたい。だってカッコいいもの。
ラバージグとは
フルサイズラバージグの特徴
フルサイズのラバージグは死んじゃいない。
そう思いたいがために、ここでもう一度フルサイズラバージグの特徴をおさらいしておきたい。
ルアーメーカーであるO.S.Pの代表・並木敏成氏は、ラバージグの特徴について以下のように語る。
【ラバージグ】
ラバースカートの果たす役割はなんだろうか。
まず第一に、アピール力を増すことが可能になる。
たとえば水が濁ったとき、同じワームをジグヘッドリグにセットするよりも、ラバージグに付けたほうがバスに気づいてもらえる可能性は格段にアップする。
広がったラバーが水を受け、そして押し返すことで「ボワンボワン」と大きく水を動かすからだ。
第二の役割は「バスを騙しやすくなる」という点にある。
昔、ネコにいろんなルアーを投げて実験したことがあった(もちろん安全な状態で)。
ネコジャラシで遊ぶようにして最初は興味を示すんだけど、たいてい数回で飽きてします。
ところが、最後までネコがじゃれついてくるルアーがひとつだけあった。それがラバージグだ。
テキサスリグなら3回で見抜くのに、同じワームをラバージグにつけると延々と追いかけてくる。
(引用:つり人社「並木敏成のThis is バスルアー」20頁)
ラバージグの「ラバー」の役割・メリットは、おおきく分けて2つ。
1:アピール力アップ
2:見切られにくさ
ラバーのボリューム感と、うねうね動くムーブは、バス(と猫)にとって効果がある…と並木氏は語る。
メリット大。”ラバー”がなければラバージグじゃない
ラバージグのもっとも大きな特徴は、なんといっても「ラバー」の存在である。
フォール中にはコンパクトに収束し、着底後には水流を受けてフワフワとなびく。
アクションをかけると再びラバーが収束し、ストップをかければまたフワフワと。まさに「静と動」という言葉が似合うルアーだと思う。
フルサイズジグは全体的なシルエットも大きく、それでいて水を押す力も強い。
同ウエイトの場合、テキサスリグよりもフォールスピードとアクションが遅く、釣り自体のスピード感はそれほど速くない。
ラバーとトレーラーのボリュームを調節すればさまざまなシチュエーションに対応でき、それでいて縦・横方向の釣りを自在に切りかえることができるため、万能型ルアーともいえるだろう。
ラバージグが活躍するシチュエーション
一般的に「ここはジグの出番っしょ!」といわれる状況は、たとえば、
●バスの視界が不明瞭になるマッディウォーターのとき
●高カロリー食を欲しているプリスポーン期のメスバスをターゲットとするとき
●バスを探している段階(サーチ中)
…といわれている。
また、個人的な体験談においては、以下のようなシチュエーションでよく釣れた。
●水が濁っているとき
●春先(3月)のプリスポーン期
●6月(梅雨)の雨天時 / 水質は関係ない
●風が吹いているとき
●とにかくバスにルアーを気づかせたいとき(サーチ中)
(春先にジグで釣った50オーバー)
基本的にはオールシーズン対応なマルチなルアーだと思うのだが、やはり「濁り・デカバス狙い・サーチ」といった用途に限定して使われるのがフルサイズジグの宿命ともいえる。
もちろん、ウエイトやトレーラーによっても使用感は変わる。
しかし、テキサスなどのワーム単体リグやフィネスリグなどと比較した場合、アピール力が高いため、出しどきは限られるルアーだといえるだろう。
とりあえず、バイトを数多く求めるタイプのルアーではない。これだけは確実。
フルサイズのラバージグは出しどきが難しい。
アピール力も高く、それでいて小バスからのバイトも少なく、チェイスも多くない。
出番そのものは多くないルアーだといえるだろう。
「フルサイズジグにしか反応しない魚」はいるのか
では、マッディ時や一発デカバス狙いのときにしかフルサイズジグの出番はないのだろうか。これがなかなか際どいところ。
「ラバージグだから反応した!」と思えるときは、やはり水が濁っているときが多い。あるいは春先など。
バスに食い気があるときや、天候や水質がおおきく変わったタイミングなどでなければ騙しにくく、個人的にはジグのことを「スピナーベイトのスローダウンVer.」と呼んでいる。
個人的な経験上においても、フルサイズジグだから釣れた!と思えたことは少ない。
「ジグで釣りたい!」だとか「ジグでデカバスを釣りたい!」だとか「ジグで釣ったらカッコよくね?」といったよほどの理由がない限り、あえてフルサイズジグを使うべき理由は見当たらない。
そういえば、近年では「ジグスト」と呼ばれるスイミングテクニックで注目を浴びることもあった。
それならスイムベイトとかスイムジグでよくない?という気持ちも拭えなくもない。
ラバーが少ないタイプのものや、軽量ウエイトのものを選ぶことで、アベレージサイズも釣れるようにはなる。
しかし、アベレージを手堅くキャッチすることを目的とするなら、テキサスリグやリーダーレスダウンショットリグなどをはじめとするワーム単体リグを使ったほうが効率がいい。
とても残念な話だが、個人的には「(今のところ)フルサイズラバージグにしか反応しない魚は限りなく少ない」というのが結論である。
あえてそれを釣る。それがフルサイズジグの浪漫。
それでもフルサイズジグは”デカバス”キラー
しかし個人的な経験上、やっぱり釣れたらデカいんす。それがラバージグの面白いところ。やたらデカバスが反応する。ステキやん。
ラバージグ番長として知られる菊元俊文氏は、フルサイズジグをこう表現した。
ラバージグは「デカバスが好きなモノ」です。
おそらく、ルアーボリュームの強さだとか、スピード感、ラバーのフレア感などがデカバスを惹きつける理由になるのだと思うが、そういう屁理屈を抜きにしても、釣れる魚のサイズがデカい。これは事実である。
この点はフルサイズジグの大きな特徴であり魅力だ。
フルサイズラバージグの”アイデンティティ”
フルサイズラバージグには、だからこそ!の魅力がある。
「これで釣ったらカッコいいじゃん」というシンプルな理由と、「食ったらデケェぞ」というデカバスハンティングを楽しめる。
達成感。何ものにも代え難いオモシロさがあるんす。
「フルサイズジグで釣ったぞ!」という価値観
(6gのライトジグ+3インチホッグワームの組み合わせ。食わせ上手。)
コンパクトジグに小型ホッグをセットすればバイトを得られやすくなるものの、それはなんか違う気もする。
”食わせ”に寄せるならラバージグでなくたった構わない。オレはジグで釣りたいんだよ。そういう世界観。
「フルサイズのラバージグでバイトに持ち込めたときの達成感。
これは病みつきになる。
「フルサイズのラバージグで釣ったぞ!」という達成感。
これが病みつきになる。
フルサイズラバージグは”浪漫”なのだ。
モンスターハンターで例えるなら、ガンランス。
車で例えるなら、燃費の悪いスポーツカーやアメ車。
ドリームジャンボ宝くじ。
いまの日本のバスフィッシングシーンにおいて、フルサイズジグは絶対的な釣果や効率を求めるルアーではなくなりつつある。
ある意味では、ビッグベイトの釣りとスタンスが似ているのかもしれない。
「これで釣れたら楽しいだろうなぁ」という希望。
「これで釣ったら俺カッコよくない?」という憧れ。
フルサイズラバージグは絶対的な釣果レベルは高くない。
しかし、ジグだからこその魅力もあるのだ。
フルサイズジグをこの世から根絶やしにしてはならない。
フルサイズラバージグは死んだのか。ジグが活きるシチュエーションを再検討する / JIGの”アイデンティティ”|まとめ
フルサイズのラバージグは”死んだ”のか。否、まだまだ現役である。
得られるバイト数は多くないものの、濁ったときなどのタフコンディション化においてはトップクラスの使いやすさ。
また、「浪漫を求めるスタイル」としても楽しめるルアーなので、なんか最近のバス釣りつまんねーな…というときにブン投げるなどして遊んでみてほしい。