人は権威性に弱い。有名人のコトバを信用してしまいがちだ。
多くの人に支持されている情報なのだから、きっとこの情報が正しいのだろう…と信じやすい。
僕はこれまで、さまざまなバスプロ・メディアプロを私淑(ししゅく)してきた。
し‐しゅく【私淑】
[名](スル)《「孟子」離婁下の「子は私 (ひそ) かにこれを人よりうけて淑 (よし) とするなり」から》直接に教えは受けないが、ひそかにその人を師と考えて尊敬し、模範として学ぶこと。「私淑する小説家」
「私淑(ししゅく)」は学習法のひとつ。
たとえば、ギターでの楽曲コピーも私淑のひとつだし、〇〇プロのスタイルや考えかたを参考にしまくるのも私淑。模倣・模範ともいえる。
僕はわりと思い込みが強い。権威がある人の言葉を鵜呑みにしやすいタイプだ。
最近では減りつつあるが、釣り初心者のころは自分のなかに判断基準がないため、どうしても権威のあるアングラーを信じるしかなかった。
しかし、メンタルケアカウンセラーの資格をとったり、釣りが上達していくにつれ、自分が業界のいいカモにされていたのだ…と気づくことができた。
まぁ今もたまにカモにされるし衝動買いするけど、つくづく思うのは「有名プロアングラーの意見のほうが正しい!」と思い込むのはリスクがあるということ。
もくじ
有名アングラーを真似るのは楽しいが、間違った方向に行くと「歪む」
プロの真似をするのは楽しい。
なんとなく自分が上手くなった気がするし、そのプロやメーカーが提唱する世界観に浸れるのもオモシロイところ。
しかし、間違った方向で”盲信”しすぎてしまうと、考えかたが偏りやすい…というリスクも生まれる。
僕自身、有名アングラーを盲信しすぎてしまい、フロロラインを否定的な目で見てしまったり(正常化バイアス)、フィネスリグ=情けないスタイルなどと見下してしまうこともあった。
たとえば、某プロはナイロンラインを推奨するが、「〇〇プロはナイロンがおすすめって言っているから、ナイロンが正しい!」だとか。
あるいは、「バス釣りの本質は”ニセモノ”のルアーでバイトを引き出すことに有り!エサに寄せるアプローチは邪道!」などと思いこみ、本当はフィネスリグを出したいのに我慢したり…。
権威性があるアングラーの意見を『それが真実』だと思い込もうとすると、認知の歪みがおきやすくなる。
実際のところは、自分自身がコレだと思えるラインを使えばいいだけだし、ハイプレッシャーが辛いなら素直にフィネスリグを投入したって構わないわけだ。
しかし、特定のアングラーの世界観に傾向しすぎてしまうと、「自分にとってのベストな判断・選択」がとりにくくなる。
考えかたが偏ってしまうと、つい他人を攻撃してしまいがちにもなるので注意したいところ。
〇〇教に入信しているときは「いやいや、底モノの釣りで感度が悪かったとしてもナイロンがベストだから!」と思い込みやすい。
または、△△教に入信しているときは「フロロ一択っしょw」と思い込みやすい。
有名人の考え方やスタイルにのめり込んでしまうことで、メンタル的な正常化バイアスが強くかかる。
「〇〇さんの言っていることが正しい!ほかのヤツらは間違っている!」と思いこみすぎてしまうと、自分にとって不都合な人間の意見や考えかたを正常に認識できなくなってしまうのだ。
アングラー各々の考えかたを否定しているわけではない。
盲信しすぎて我を見失うのはクールじゃない…と言いたいだけだ。
〇〇プロがこう言っているから、それが正しいんだ!…と思い込むのはキケンすぎる。
いまはネット上に”ソレっぽい人”の意見がたくさん書かれているので、ウソかホントかも考えようとせずに他人の意見を信用しすぎてしまうのはリスクがある。
…と考えるのが、認知の歪みを起こさないための適切なジャッジメントだと思う。
有名アングラーが語る「知識や情報に惑わされるリスク」とは
当記事の内容とやや矛盾しているようにも感じるが、有名アングラー自身が「情報を鵜呑みにしすぎるのはキケン」と語っていることも見逃してはならない。
たとえば、レイドジャパン代表・金森隆志氏は、自身の著書「金森隆志の岸釣りQ&A50」にて以下のように語る。
「他人の知識よりも自分の物差しを作ってください」
知識よりも体験です。
知識はしょせん人が作った物差しです。それよりも大事なのは、体験や体感して作り上げる自分の物差し。
それがある程度できた時に、初めて他人のセオリーやパターンという知識に照らし合わせてください。
自分の物差しができていればさほど問題ではありません。でも何もない状況では、無基準・無責任・無謀でしかありません。
自分の物差しがあれば、判断ができます。自分の意思で行った体験や体感は、自分の中では真実です。
(引用:金森隆志「岸釣りQ&A50 パート2」205頁より)
まずは、実際にやってみること。
それから適切にジャッジすればいい。
他人の考えと自分自身の考えは、かならずしも同じとはかぎらない。
自分に自信が持てない人ほど〇〇教の沼にハマってしまいやすい。
初心者がカモられる・洗脳されやすい理由は、自分の体験や物差しが不十分だからだ。そしてこれは僕の体験談である。
まずは、自分が物事を正常に認識できているのか、あるいは歪んだ方面でしか物事を解釈できていないのか、クールな頭を持って客観的にながめてみたい。
疑いすぎるのもよろしくない。心はホット・頭はクールに
ただ厄介なのは、信用できる情報もある…という部分。
多くのブロガー・ユーチューバー・メディアアングラーは、善意でコンテンツを作成してくれている。
なかには僕のようにお金がほしくてコンテンツを作る人もいるが、どれもこれもが”嘘”ではないというのが難しいところだ。
結局は、「自分で考え、自分で試行錯誤して、自分なりの結論を見つける」という地道なプロセスを辿るしかない。
自分の経験と体感がすべて。
自分の答えがほかの人にとって不正解だとしても、自分にとっては正解。これでいいのだ。
地味だし遠回りだし非効率だと思えるけれど、実はそれが自分らしい生き方を送るための最短ルートなのではないか。
いずれにせよ、自分のチカラで考えて判断するという能力を育んでいかなければ、ネット社会の餌食になってしまいかねない。
プロの真似をするのは楽しい。
しかし、極端に盲信しすぎてしまうのも考えものだ。
演劇の世界では、役を演じるときには「心はホット、頭はクールに」を心がける。まさしくソレだ。
動画メディア、ブログ記事などを眺めるときは「情熱は持ちつつも、冷静な視点」を忘れないでおきたい。
そういえば、ドラゴン桜の教師役がこんなことをいっていた。
「自分で物事を判断できる能力をつけなければ、いつまでも世の中に搾取され続けてしまうんだ。自分で考え、学び、選択ができなければ、一生オマエたちは社会の食い物にされ続けるハメになる。それが嫌なら、東大へ行け!」
かならずしも東大に行く必要まではないと思うけれど、物事・現象を自分自身のアタマとカラダで理解できるようにならなければ、業界・ビジネスの沼にハマってしまうだろう。
まとめ:釣りへの考えかたは人それぞれ。実際にやってみて、バスプロと意見が違ったのならそれが自分自身の答えである
バスプロ・メディアプロを私淑(模倣・参考に)することは大切。
しかし、もっとも大切なことは「自分自身で試行錯誤し、最終的な結論は自分自身で下すこと」である。
どこかの有名人が「〇〇がベスト!」と言っていても、自分にとってそれが正しい選択ともかぎらない。
「バスプロ・メディアプロの言っていることが絶対に正しい」と思い込むのは危険である。
昨今はネット社会。情報は拾い放題。
だからこそ、「自分自身で考えて行動し、結論を出す」というシンプルなプロセスを忘れてはならない。