カバー撃ち・フリッピングの基礎知識(意味、違い、発祥など)と、タックル論。絶滅危惧種「フリッピング(フリッパー)」しか獲れない魚がいる。

『フリッピング』という言葉をご存知でしょうか?

ラインを引きずり出してルアーをポイっと投げるアレです

(画像:Go Beyond

「フリッピング」というと、何やら専門性の高いマニアックなスタイルかと思われる人もいるかもしれません。

がしかし、実はフリッピングは多くの人が気づかぬ内に自然と行っているスタイルだったりします(理由は後述の「フリッピングってどんな意味?」にて)。

近年ではフィネス系スタイルの勢力に押されがちな”フリッピングスタイル”ですが、逆に競争率が低いこともあって、フリップでしか釣れない魚もいるんじゃないかとすら感じることも。

そこで今回は、個人的にも大好きなスタイルである「フリッピング(フリップ)の基礎知識とタックル論」について書いていきます。

フリッピング(フリップ)の基礎知識

フリッピング(フリップ)ってどんな意味?

「フリッピング」という言葉の意味・定義は個人によって色々あるかとは思います。

僕的には”フリッピング(フリップ)”は、『フリッピング動作・ピッチングでカバーやシャローを打つ行為全般だと解釈してます。

「フリッピング」の意味・定義について、田辺哲男氏は以下のように語っています。

「俺の場合は、比率的にはラインを引き出してやる、いわゆるフリッピングが1割くらい、残りの9割はピッチングだね。ラインを引き出してやるフリッピングとピッチングをひっくるめて『フリップ』っていうのが、アメリカも含めて最近の流れだよね」

(引用:田辺道場 NEXT STAGE」

田辺道場 NEXT STAGE (一生楽しめるバスフィッシングの手引書)
created by Rinker

「ラインを引っぱり出してルアーを投げる行為”のみ”がフリッピング」だと思われがちですが、実はそうではありません。

ピッチングを使ったカバー打ちなども”フリップ”に含まれている、と田辺氏は語っています。

また、菊元俊文氏によると、


アメリカでは「フリップ」とは
シャローをジグやワームで撃って行く行為全般を指します。
つまり、ピッチングもフリップですし、サイドハンドでキャストしてもウェッピングしても、そのような釣りをしているなら普通にフリップと言います。

(引用:菊本俊文.jp オフィシャルブログ

とのこと。

「フリッピング」という言葉の意味は、アメリカにおいてはシャロー全般をフリップしたりカバー打ちしたりする行為全般のことを指す、と菊本氏は語っています。

カバーの中・外、シャローバンク打ち、アシやガマ打ち、護岸やテトラ打ち、野池のカバー打ち…これ全部フリッピングなんですね。

「フリッピング」は、実はわりと身近なテクニックで、多くのバサーは気づかないうちにフリッピングを行っていたりする。

フリッピングの原点

「フリッピング」の発祥はアメリカで、ディー・トーマスというカルフォルニア出身のアングラーが生み出したテクニックです。

「フリッピング」と呼ばれる以前は「トゥーリーディッピング」というネーミングで(トゥーリーとは、”ホタルイ(アシやガマのような水性植物)”の総称)、『ディッピング(浸す)』という言葉が起源となっています。

物干し竿のような長いロッド(12フィートクラス)で、カバーの真上からジグを落として(浸す、ディップして)、すぐ次のポイントを落とす…といったメソッドで、これがめちゃくちゃ釣れた。

「トゥーリーディッピング」を使って大会で優勝したことがキッカケとなり、一気に広まったテクニック。

これが現在のフリッピングの起源と言われています。

その後、トーナメントのロッド長の規定に「8フィート未満」が設けられ、現在の7.6~8フィートのフリッピングロッドが誕生…という流れです。

世界最強のフリッパー

「フリッパー」とは、フリッピングを中心にして自分の釣りを組み立てていく人のこと。

個人的には、フリッパーとして世界的に最も有名なアングラーは、トミー・ビッフェルという60代のトーナメンターだと思っています。

(画像:Bassmaster

トミーは、多くの他のトーナメンター達が沖の回遊魚やストラクチャーを狙っていたりするシーンでも、1人だけフリッピングをやっていたりする(しかもそれで勝つ)…という猛者フリッパーです。

(画像:MLF

トーナメントでフリップで勝つとか…超シブいっす!

こんなオジサマになりたい(笑)

【関連動画】トミーによるフリップの解説

今の日本じゃ普通のフリップだと釣れなくない?

現在の日本はフィネスリグが主流になりつつありますが、オーソドックスなフリッピングでは釣れないかと言われると、そんなことはありません。

個人的な体験談(という名の自慢)として、多くのエキスパートがフィネスリグで撃ちまくった後のカバーや、プロが打った後のカバーに入っても釣れたという経験も。

【関連記事】※オリキンの後に入っても釣れたぞ!と自慢している記事↓

確かに、「カバーにブチ込めば簡単に食う」というイージーな世界ではなくなってきていますが、オーソドックスなフリッピングでもまだまだ釣れる魚はいると感じます。

むしろ「他のアングラーがあんまりやらないので、逆に効果的。逆に釣れる」まである。言い過ぎか。

とにかく、フリッピングはとっても楽しいので、やったことがない人はぜひチャレンジしてもらいたいスタイルなんですね。

フリッピング(フリップ)の魅力

個人的な体験からきている、『フリッピングの魅力』について語ります。

僕はフリップの釣りが好きで、どのようなフィールドでも大体はフリッピングしています。

フリップの釣りは退屈だと思われがちですが、実はそんなことはなく、むしろ”超アグレッシブ”だとすら感じることも。

フリップの魅力をざっと挙げると、以下のようなものになります。

【楽しい”フリップ”】

●狙いを定めて”打ち込む”キャスト感

●リグの操作感(マニュアル車感)

●フッキングの爽快感

●カバーからブチ抜くアグレッシブ感

●ストロング感

フリップ・ピッチングは超ピンポイントに落とす釣りなので、キャストの「狙い撃ち感」が面白い。

テキサスリグやジグなどを使って、自分の意思でコントロールする「マニュアル感(操作感)」も楽しい。

フッキングする瞬間の「オラァ!掛けるゼ!」的な爽快感も最高。

掛けた後にバスと自分との力比べ的な、「カバーから魚をブチ抜くアグレッシブさ」も気持ち良い。

ピッチング〜操作まではやや繊細な印象ですが、掛けてからのアグレッシブさはフリップならではの魅力。

繊細な操作を要されつつも、ストロングな要素も求められるのが『フリッピング』なのです。

フリップで超ヘビーカバーの奥狙ってると「オレ、ストロングなアングラーなんだぜ」感に酔えるのも楽しいんですよね(笑)

さぁ、みんなでフリッパーになろう!

【関連記事】フリップやりまくってた時の体験談↓

フリッピングに使うタックル論

ここからは、フリッピングをするのに向いているタックルを書いていきます。

フリップ用ロッド

(画像はGルーミスのフリッピングロッド)

フリッピング用ロッドに最適なものとして、一般的によく言われるのは「7〜8フィートくらいのロッド」というもの。

日米問わず、フリッピングで使用されるロッド長は7~8フィート。最も多いのは7.6フィート。

個人的な体験談としても、6.8〜7フィートくらいのものより、7.5フィート以上のやや長いロッドの方が快適だと感じます。

●カバー越しのフッキング精度

●カバー打ちのしやすさ(ラインメンディング含め)

●ピッチングの距離

●フリッピングの距離

7.5フィート以上のロッドだと、上記のようなメリットを感じやすい。

7フィートと7.5フィート以上だと全然違います。

フリッピングロッドを選ぶときは、「7.5〜8フィート」くらいの長いロッドを選ぶのが基本となります。

釣り場の環境によっては短い方がいいことも

(画像は津久井湖)

オーバーハングの中で釣りをすることもある環境では、ロッド長は短い方が良かったりします。

例えば、釣り場の環境に合わせたフリッピングロッド長の選び方について、川島勉氏は下記のように語っています。


リザーバーの場合、キャストが……。
実践篇でわかると思いますが、頭上にオーバーハングやツルがある状態で投げねばならんことが多いんですよ。

僕自身は66MHをメインに使っています。

取り回しもグッドで、オーバーハングに入り込んで釣る場合もロッドを操作しやすいです。

ちなみに、頭上に妨げがない場合や、超ヘビーカバーを釣る場合は69MHなど、長めのモデルを使っています。

僕がメインで使っているのは6ft6inのMHパワーのモデルです。リザーバーの場合、オーバーハングに入り込んで釣る場合も考えて、長すぎないモデルが使いやすいです。

(引用:siteB「川島勉のテキサスリグ道場in亀山湖 :第3回」

引用元の記事は2016年のものなのでやや古い情報かもしれませんが…

個人的にも関東のリザーバーだと、6.6フィートくらいのロッドの方が取り回しやすいと感じることも。

例えば、千葉県の房総半島にあるダム湖や、神奈川県の相模湖などでは、オーバーハングした木々の中にボートを突っ込んで行くこともあります。

上記のようなときは、7.5フィート以上のロッドよりも、6.6〜6.8フィートくらいのロッドの方が取り回ししやすい。

オーバーハング内のフリッピングでは、魚との距離もそこまで離れていないため、ロッドが長くなくても良いと感じることもあったり。

フリッピングロッドの長さは、釣り場の環境によっては7.5フィート以上でなくても構わないと、僕は考えます。

【関連記事】オカッパリに使うカバー撃ちロッドのおすすめ

フリップ用ロッドのパワー選択

フリッピングに使うロッドパワーを選ぶときは、「カバーから魚を引きずり出せるパワーであるかどうか」を目安にするのが最もわかりやすいかと思います。

もし掛けれたとしても、そもそもカバーから引っ張り出せないのでは意味がないので、ヘビーなフリップをするなら強いパワーのロッドが必須。

最低でもMH〜XHパワーは欲しいところです。

ベーシックなのはH(ヘビー)パワー。

表記的には1/2〜1 1/4ozくらい?

●7.6フィート

●Hパワー

●ファーストテーパー

フリッピングロッドは、上記3点が含まれているロッドが”黄金比”的な感じです。

フリップに適したベイトリール

フリッピング・ピッチングという動作がメインとなるフリップの釣りにおいては、リール選びは大切な要素。

といっても超カンタンです。

ギア比はハイギア、自重はそこそこ軽いもので、テキサスリグとジグが投げられる性能であること。

これだけです。

ハンドルは個人の好みですが、僕は今のところ右ハンドルを使用しています。

リールの自重選びは、「軽けりゃ軽いほど良い」とも言えなかったり、好みによる部分などもあったりするため、ハッキリと断言できないのが本音。

タックルバランスについては以下の記事で語っているので、よかったらコチラも読んでみてください↓

フリップで使うリグ・ルアー

フリッピングで使用するルアーは、テキサスリグとラバージグです。

しかし近年では、リーダーレスダウンショットリグやフリーリグなど、フリッピングで使われるリグが多様化してきているため、好きなものを使いましょう。

がしかし、基本的にはテキサスリグとラバージグです。

●シンカーの重量

テキサスシンカーのウエイトを選ぶ際の絶対条件は、「リグがカバーの中にしっかり入る重さ」であること。

ワームの種類やサイズにもよりますが、大抵の場合は5〜10gのテキサスシンカーであれば問題ないことが多いです。

個人的には、房総リザーバーでフリッピングをするときは7〜10gくらい、相模湖や津久井湖なら5〜7gくらい…といった感じで使い分けています。

フィールドによってウエイトを決めているわけではありませんが…カバーの濃さによって選んでいる傾向がありますね。

リアクション狙いで意図的に1/2〜3/4ozシンカーを使ったり、状況によって変えたりすることもあるため、一概に「〇〇の釣り場は△g!」とは言えないのが本音です。

基本は7g。これで入らないなら10g。
大抵の場合はこれだけて済んだりする。

テキサスシンカーの重さの選び方は、以下の記事でも書いていますので、よかったら参考にしてみてください↓

【関連記事】テキサスリグにおすすめのフック

ライン

フリッピングで使用するラインは…まだ研究中なので何も語れることがありません(笑)

大まかに書くとするなら、

【ナイロン】
20~30ポンドを使用する。
高感度なロッドを使用するときに使う。「情報を拾いすぎちゃう!感じすぎちゃうから嫌だ!」という時のバランス取りのため。
高弾性ロッドを使用するときの、バラシ防止のため(しなやかさが欲しいとき)。
バックラッシュを避けたいとき。

【フロロカーボン】
20~25ポンドを使用する。
低弾性〜中弾性ロッドに。
カバー越しにフッキングをすることが多いとき。
シャローバンク〜ミッドレンジのボトムを探るとき。
感度を重視したいとき。

【PE】
55~65ポンドを使用する。
水生植物が多いフィールドで使用する。
アシやガマ打ちなど、超近距離のフリップで。
ハードカバーがないフィールドで。
とにかくフッキングパワーを上げたいとき。

ラインの種類選択に関してはまだ研究中のため、上記のようなふんわりしたことしか書けません。

正直まだよくわかってないので、参考程度に聞き流してください。

【関連記事】↓コレの20~25ポンド使ってますが、特にトラブルもないため愛用中↓

使用するワーム

●クリーチャーワーム

フリッピングで使用するワームは、「クリーチャー系」がメインとなります。

日本では「ホッグワーム」などと呼ばれています。

個人的には、エスケープツイン、ブラッシュホッグ、スウィートビーバーさえあれば問題ないと感じてます。

【関連記事】

●クローワーム

フォールで食わせるならクロー系がメイン。

アシやガマ、シャローの岩盤や護岸などについているバスを、「落としてパクッ」と誘うときに使用する感じです。

有名なのはズーム「ウルトラバイブスピードクロー」など。

●スティックベイト

カバーに入れ込むのを重視するならスティックベイトを使います。

ゲーリーのセンコーなどは有名。

ストレートワームのテキサスってあんまりやる人がいないので、スレた野池などで効いたりします。

【関連記事】

ワームのサイズ

僕が好んでつかうのは、大体3.8〜4.5インチくらいのサイズ。

3.8〜4.25インチのワームでサーチしつつ、「ここぞ!」というタイミングでは4.5〜5インチくらいのバルキーなワームを選ぶこともあります。

まず最初は、4インチくらいのスタンダードなクリーチャーワームを使うのがおすすめ。

まとめ:フリッピングの基礎知識(意味、違いなど)とタックル論

個人的な体験談からきている意見と一般論を交えつつ、「フリッピングの基礎知識、タックル論」について書いてみました。

この記事で書かれていることをまとめると、以下のようなものになります。

「フリッピング」とは、フリッピング・ピッチングでシャローのカバー打ちなどを行う行為全般を指す言葉。

●フリップの釣りは「繊細&アグレッシブ」で超楽しい。

●フリッピングに使うロッド長は、7.5〜8フィート

●リールは「ハイギア、軽量、リグを軽快にピッチングできる性能」を選ぶ。

●ライン素材は好みで。太さは20~30ポンド(ナイロン、フロロ)

●テキサスシンカーは7~10gが基本。コレをベースに、状況によって変える。

●ワームはクリーチャーワーム(ホッグワーム系)がメインだが、お好みで。

フリップの釣りは繊細なキャストとアグレッシブなバスとの勝負を楽しめるので、フリッピングスタイルが気になっている人はぜひチャレンジしてみてください。

【こちらもお役に立つかもしれません】